人工知能(AI)は近年急速に普及しつつあります。AIは、私たちが情報を生成し、分析し、消費し、そして行動に移す方法を根本的に変える「ゲームチェンジャー」として広く認識されており、すでに多くの産業分野でイノベーションを推進し、学術分野においても応用の範囲はますます広がっています。更に、エンターテインメントや教育から意思決定や人々の関わり方に至るまで、社会のあらゆる領域に影響を及ぼしつつあります。 しかし、AIの拡大やサステナビリティのための潜在的な可能性を模索するにあたっては、それが生み出す機会と同時に、課題や法的・倫理的な問題を避けては通れません。AIがどのように持続可能な未来を支えることができるのかについて活発な議論が続く中、私たちはAIと持続可能性との接点を理解し始めたばかりです。 多くの研究者や専門家は、AIをサステナビリティの課題に取り組むための有用なツールと見なしています。たとえば、研究課題の設定や解決、または持続可能な技術へのイノベーションの促進などがこれにあたります。現在ではさまざまな研究にAIツールが活用され、エネルギーシステムの転換、災害への備え、森林破壊など、複雑で多面的なサステナビリティの課題への取り組みに役立てられています。同様に、AIによるエネルギー利用や素材利用の最適化が、すでに環境面で大きなプラスの成果をもたらしています。 他方で、AIはサステナビリティに対して否定的な影響を与える側面もあります。データセンターにおける膨大なエネルギーや水の消費など、AIの直接的・間接的な環境負荷に対する懸念が高まっており、特にその急速な拡大を考えると、環境への影響の全体像はまだ十分に理解されているとはいえません。さらに、社会的・政治的な影響についての理解もきわめて限定的です。たとえば、雇用喪失、民主的プロセスへの介入、意思決定者への誤ったあるいは偏った情報の提供、あるいはAIへのアクセスから弱者が排除されたり、権力者だけが恩恵を受けたりすることで既存の不平等が拡大する可能性などが挙げられます。 このようなAIとサステナビリティの接点にある期待と問題点を明らかにするため、東京大学とシュプリンガーネイチャーは、2026年2月17日に「2026 SDGsシンポジウム」を共催します。 このシンポジウムでは、持続可能な未来への移行と持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、AIがもたらす機会と挑戦について批判的に議論します。主要な論点の一つは、さまざまなステークホルダーがどのようにAIを活用し、サステナビリティへの負の影響を最小限に抑えつつ、包摂的な社会変革を推進できるかという点です。これは、AIに関するガバナンスが国境を越え、透明性・イノベーション・公平性を確保するためのマルチレベルの協力を必要とするという強い呼びかけに基づくものです。 2026年のSDGsシンポジウムは、シュプリンガーネイチャーが掲げるオープンサイエンスの推進、責任あるAIの活用、多様性・公正性・包括性(DEI)の促進、そして持続可能な未来の実現、および東京大学の「UTokyo Compass」戦略のビジョン──すなわち、イノベーション、多様性、平等の促進と、社会的インパクトのある変革的な研究に取り組む若手研究者の支援──と密接に連動しています。 この機会に、AIとサステナビリティの接点で活躍する国内外の著名な研究者、学生、若手研究者の皆様をお招きします。彼らの研究により、これらの多面的な現象がどのように説明され、社会的に意義と影響のある解決策がどのように発展させられるかについて、活発な議論を行います。 |