SDGs Symposium 2026 – AIとサステナビリティ:持続可能な未来に向けた機会と挑戦

人工知能(AI)は近年急速に普及しつつあります。AIは、私たちが情報を生成し、分析し、消費し、そして行動に移す方法を根本的に変える「ゲームチェンジャー」として広く認識されており、すでに多くの産業分野でイノベーションを推進し、学術分野においても応用の範囲はますます広がっています。更に、エンターテインメントや教育から意思決定や人々の関わり方に至るまで、社会のあらゆる領域に影響を及ぼしつつあります。 

しかし、AIの拡大やサステナビリティのための潜在的な可能性を模索するにあたっては、それが生み出す機会と同時に、課題や法的・倫理的な問題を避けては通れません。AIがどのように持続可能な未来を支えることができるのかについて活発な議論が続く中、私たちはAIと持続可能性との接点を理解し始めたばかりです。 

多くの研究者や専門家は、AIをサステナビリティの課題に取り組むための有用なツールと見なしています。たとえば、研究課題の設定や解決、または持続可能な技術へのイノベーションの促進などがこれにあたります。現在ではさまざまな研究にAIツールが活用され、エネルギーシステムの転換、災害への備え、森林破壊など、複雑で多面的なサステナビリティの課題への取り組みに役立てられています。同様に、AIによるエネルギー利用や素材利用の最適化が、すでに環境面で大きなプラスの成果をもたらしています。 

他方で、AIはサステナビリティに対して否定的な影響を与える側面もあります。データセンターにおける膨大なエネルギーや水の消費など、AIの直接的・間接的な環境負荷に対する懸念が高まっており、特にその急速な拡大を考えると、環境への影響の全体像はまだ十分に理解されているとはいえません。さらに、社会的・政治的な影響についての理解もきわめて限定的です。たとえば、雇用喪失、民主的プロセスへの介入、意思決定者への誤ったあるいは偏った情報の提供、あるいはAIへのアクセスから弱者が排除されたり、権力者だけが恩恵を受けたりすることで既存の不平等が拡大する可能性などが挙げられます。 

このようなAIとサステナビリティの接点にある期待と問題点を明らかにするため、東京大学とシュプリンガーネイチャーは、2026年2月17日に「2026 SDGsシンポジウム」を共催します。 

このシンポジウムでは、持続可能な未来への移行と持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、AIがもたらす機会と挑戦について批判的に議論します。主要な論点の一つは、さまざまなステークホルダーがどのようにAIを活用し、サステナビリティへの負の影響を最小限に抑えつつ、包摂的な社会変革を推進できるかという点です。これは、AIに関するガバナンスが国境を越え、透明性・イノベーション・公平性を確保するためのマルチレベルの協力を必要とするという強い呼びかけに基づくものです。 

2026年のSDGsシンポジウムは、シュプリンガーネイチャーが掲げるオープンサイエンスの推進、責任あるAIの活用、多様性・公正性・包括性(DEI)の促進、そして持続可能な未来の実現、および東京大学の「UTokyo Compass」戦略のビジョン──すなわち、イノベーション、多様性、平等の促進と、社会的インパクトのある変革的な研究に取り組む若手研究者の支援──と密接に連動しています。 

この機会に、AIとサステナビリティの接点で活躍する国内外の著名な研究者、学生、若手研究者の皆様をお招きします。彼らの研究により、これらの多面的な現象がどのように説明され、社会的に意義と影響のある解決策がどのように発展させられるかについて、活発な議論を行います。


コンタクト先

Secretariat of SDGs Symposium 2026
株式会社プライムインターナショナル

プログラム

Time

Agenda

14:00 – 14:10 

開会の辞 

藤井 輝夫(東京大学総長) 

14:10 – 14:30

基調講演 1 

チリツィ・マルワラ (国際連合大学学長、国際連合事務次長)

14:30 – 14:50

基調講演 2 

マグダレーナ・スキッパー(Nature編集長、Nature Portfolioチーフ・エディトリアル・アドバイザー)

14:50 – 15:35  

Plenary 1

アユーブ・シャリフィ(広島大学 教授)

Plenary 2

周 新(地球環境戦略研究機関(IGES)AI・ニューフロンティアグループディレクター) 

Plenary 3

高木 啓伸(日本科学未来館 副館長、IBM 東京基礎研究所 研究員)  

Plenary 4 

荻野 裕史(東京エレクトロン株式会社 サステナビリティ グローバルヘッド) 

15:35 – 15:50 休憩 

15:50 – 17:00

パネルディスカッション
パネルモデレーター:横山 広美(東京大学 教授)
17:00 – 17:10 

閉会の辞 

福士 謙介(東京大学未来ビジョン研究センター センター長、教授) 

アントワーン・ブーケ(シュプリンガーネイチャー・ジャパン 代表取締役社長)

17:20 - 19:00  

ネットワーキングイベント 

学生ポスターセッション 

登壇者プロフィール

藤井 輝夫

東京大学総長

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1993年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了・博士(工学)、同生産技術研究所や理化学研究所での勤務を経て、2007年東京大学生産技術研究所教授、2015年同所長。2018年東京大学大学執行役・副学長、2019年同理事・副学長(財務、社会連携・産学官協創担当)を務め、2021年より同総長に就任(現在に至る)。 

その他、2005年から2007年まで文部科学省参与、2007年から2014年まで日仏国際共同研究ラボ(LIMMS)の共同ディレクター、2017年から2019年までCBMS(Chemical and Biological Microsystems Society)会長、2021年から2024年まで総 

合科学技術・イノベーション会議議員(非常勤)、2025年6月より国立大学協会会長。 

専門分野は応用マイクロ流体システム、海中工学。

チリツィ・マルワラ  

国際連合大学学長、国際連合事務次長

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2009年から2013年までヨハネスブルグ大学(南アフリカ)工学・建築環境学部長、2013年から2017年まで研究・国際化担当副学長、2018年から2023年まで副学長兼校長を務める。学術、政策、経営、国際分野において豊富な経験を有し、5件の特許を共同保有している。学際的な研究に取り組み、工学、社会科学、経済、政治、金融、医学に人工知能の理論と応用を展開してきた。ユネスコ、ユニセフ、WHO、WIPOと協働し、世界および南アフリカの政策決定機関に参加してきた。国連事務総長の科学諮問委員会のメンバーであり、アメリカ芸術科学アカデミー、世界科学アカデミー(TWAS)、南アフリカ科学アカデミー、アフリカ科学アカデミーのフェロー。さらに、南アフリカ最高位の勲章である「マプングブウェ勲章」や、南アフリカ科学アカデミーの「社会のための科学金メダル賞」など、多くの栄誉を受けている。2024年には、New African Magazineによって「最も影響力のあるアフリカ人100人」に選ばれた。

マグダレーナ・スキッパー

Nature編集長、Nature Portfolioチーフ・エディトリアル・アドバイザー 

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Natureの編集長であり、Nature Portfolioのチーフ・エディトリアル・アドバイザー。Nature Reviews Geneticsのチーフ編集長、Natureの遺伝学とゲノム科学分野のシニアエディター、およびNature Communicationsの編集長を務め、多くの編集および出版の経験を積んできた。メンターシップ、研究公正の推進、そして研究における協力と包括性に情熱を注いでいる。研究において充分に評価されていない少数派のグループを促進したいという想いの一環で 2018年に共同創設者として、女性の若手研究者を対象としたNature Research Inspiring Science Awardを立ち上げた。ケンブリッジ大学(英国)で遺伝学の博士号を取得。 

アユーブ・シャリフィ 

広島大学 教授 

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広島大学IDEC国際連携機構の教授を務める。土木工学と都市計画のバックグランドを持ち、スマートシティおよび都市と気候変動の緩和・適応のインターフェースに関する研究を行っている。Future Earthなどの地球変動研究プログラムに積極的に貢献し、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書やUN-Habitatの世界都市報告書の筆頭著者を務めた。気候変動と都市計画の境界領域を研究しており、持続可能で平和、公正かつレジリエントなコミュニティの構築に資する知見を提供することを目標としている。

周 新 

地球環境戦略研究機関(IGES)AI・ニューフロンティアグループディレクター 

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公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)において、AI・ニューフロンティアグループのディレクターを務める。SDGs指標および相互連関分析、気候政策評価、グリーン雇用分析、エネルギーシステムのシナリオ分析、水・食料・エネルギーネクサス研究など、幅広い分野の研究に携わり、その推進に大きく寄与してきた。また、SDG相互連関分析・可視化ツール、流域SDGインタラクティブツール、日本版2050低炭素ナビゲーターの開発を統括。近年は、AI・機械学習分野へと研究領域を拡大し、NLP(自然言語処理)を用いた因果マッピング、機械学習による災害予測およびリスク評価にも取り組んでいる。1994年から2003年までは、当時の国家環境保護総局(State Environmental Protection Administration)傘下にあった中国環境経済政策研究センター(PRCEE)に勤務し、政策研究を取りまとめる役割を担い、その学術的貢献により複数の国家級科学賞を受賞。

高木 啓伸  

日本科学未来館 副館長、IBM 東京基礎研究所 研究員

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1999年にIBM東京基礎研究所へ入所以来、ウェブアクセシビリティ、高齢者支援技術、ナビゲーション技術の研究開発に従事してきた。現在は、AIスーツケース・コンソーシアムにおける自律型ナビゲーションロボット「AIスーツケース」プロジェクトを主導するとともに、日本科学未来館のアクセシビリティラボを率いている。 

2000年にヒューマン・コンピューター・インタラクション分野で博士号を取得。 

ACM ASSETSにおいて2002年および2009年に最優秀論文賞を受賞し、2011年には文部科学大臣表彰(科学技術分野)を受賞。Association for Computing Machinery(ACM)会員。

荻野 裕史 

東京エレクトロン株式会社 サステナビリティ グローバルヘッド 

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半導体業界において約40年の経験を有し、東京エレクトロンで複数の経営幹部職を歴任。直近ではサステナビリティ統括部長を務めた。東京エレクトロン入社後、米国現地法人において市場調査業務を担当。帰国後は日本国内において新規事業の立ち上げやSPE(半導体製造装置)を取り扱うビジネスユニットに参画。英国現地法人では欧州におけるSPE事業の市場開拓を先導した。 

大学院でのサステナビリティに関する研究を基に、社内におけるサステナビリティ経営を推進。事業活動を通じて社会の課題解決や発展に貢献し、中長期的な企業価値の向上を目指し活動を展開している。気候変動の課題に対応する半導体エコシステムの取り組みを加速させることを目的とした 

世界初のグローバルイニシアチブである「SEMI Semiconductor Climate Consortium(SCC)」の運営評議会メンバーでもある。 

福士 謙介

東京大学未来ビジョン研究センター センター長、教授

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東京大学未来ビジョン研究センター センター長、教授。東北大学土木工学科卒業。米国ユタ大学博士課程を経て東北大学助手、アジア工科大学助教授、東京大学助教授を経て2013年より現職。土木環境工学を専門とし、サステイナビリティ学を日本で立ち上げたメンバーのひとり。地球と地域の環境問題、気候変動適応と緩和、地域エネルギーマネジメント、排水・廃棄物処理、土木環境インフラ、健康リスクマネジメントに関する研究を日本と海外の両方で進めている。

アントワーン・ブーケ

シュプリンガーネイチャー・ジャパン 代表取締役社長

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アントワーン・ブーケはシュプリンガーネイチャーのヴァイス・プレジデントとして、東京を拠点に日本、東南アジア、オセアニアのインスティテューショナル・セールスを担当している。アジア太平洋地域の学術出版界で約30年の経験を持ち、シュプリンガーネイチャー・ジャパンの代表取締役社長も務める。これまでアジア地域の出版プログラムを指揮したほか、日本で医学情報事業を立ち上げた。また書籍のコミッショニング・エディターとしての経験もある。オーストラリアで生まれ、ブリスベンのグリフィス大学卒業。東京大学で博士号(物理学)を取得。1994年から日本在住。

パネルモデレーター

横山 広美 

東京大学 教授 

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横山 広美氏は、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)および大学院情報学環(III)の教授です。科学技術社会論を研究分野とし、科学、信頼、倫理に関する論文を発表しています。特に近年は、ELSIおよびRRIの枠組みを用いたAI倫理指標(オクタゴン測定、ELSIスコアなど)の開発と国際比較研究に取り組んでいます。現在は、持続可能なAIに関する認識と政策支援に関する研究を主導しています。横山氏は100以上の委員会で委員を務め、研究、政策、学会運営など多岐にわたる分野でリーダーシップを発揮しています。現在、東京大学出版会理事(2024年~)、トヨタ財団理事(2024年~)、国立高等専門学校機構理事(2022年~)、科学技術社会学会理事(2019年~)などを兼任しています。

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