研究公正

学術記録の公正性と正確性を維持するために当社が行う取り組みと投資について、透明性をもってお伝えします。

シュプリンガーネイチャーは、2025年に53万9000報の質の高い一次研究論文を出版しました。これらの研究成果が信頼され、再利用され、さらなる研究の基盤として活用されることで、知識を発展させ、世界が直面する最も困難な課題に取り組むことができるようにすることは、当社の最優先事項です。

研究を取り巻く環境は、新たなテクノロジーの影響を受けて進化しており、研究の正確性がどのように維持されているかへの関心が高まっています。このページでは、当社の出版物の公正性に関するデータを透明性をもって示し、科学出版に期待される品質を維持するために当社がどのように投資し、取り組んでいるかを紹介します。また、実施可能な措置および実際に講じられている措置について説明します。当社の編集方針や、編集者を支援する研究公正に関するトレーニングのリソースの詳細は、「Research integrity for Editors」をご覧ください。

「当社には、出版されるコンテンツの公正性について全体的な責任を負う専任チームがありますが、公正性の確保は、シュプリンガーネイチャーの事業運営の中心となるものです。公正性の保証に関する責任は、投稿から出版にいたる出版プロセスをサポートする私たち全員だけでなく、投稿前に公正性の問題に気づく論文の著者、投稿論文の精査を行う編集者や査読者、誤りが含まれたまま出版されてしまう数少ない論文を見つけて、協力してくださる広いコミュニティーの皆さんにもかかっていると考えています。こうした責任を、出版のエコシステム全体で共有することにより、学術研究の信憑性が確保されるのです。シュプリンガーネイチャーは、グローバル出版社として、オープン性、透明性、および協力を重視しており、このページでは、当社が関係するコミュニティーとともにどのようにして科学的記録を維持しているのかを示すことを目的としています。」

Harsh Jegadeesan(ハーシュ・ジーガディーザン)、Chief Publishing Officer

Harsh Jegadeesan

信頼できる研究の確保 — 出版プロセスの複数の段階に公正性チェックが組み込まれています

2025年、シュプリンガーネイチャーには310万件を超える論文が投稿され、そのうち出版されたのは53万9000報でした。

信頼性のある質の高い研究論文を出版するため、編集および出版のプロセスには複数の公正性チェックが組み込まれています。こうしたチェックは、AI(Artificial Intelligence;人工知能)ツール、高度な専門性を有する研究公正チーム、そして編集者によって支えられています。研究論文は、出版プロセスの複数の段階で、公正性または編集上の理由により却下される可能性があります。

下のデータと図は、投稿された研究論文が出版記録の公正性を維持するために、どのような段階を経て選別されるかを概略的に示したものです。なお、本ページのデータは年2回更新され、年間データおよび半期時点での暫定値を掲載しています。

Integrity funnel 2025 © Springer Nature

2025年には、過去および最近出版された研究論文1462報が撤回されました。撤回論文の57%(833報)は、学術記録の適正化に向けた当社の取り組みの一環として、2024年1月以前に出版された論文を対象としたものです。43%(628報)は、2024年1月以降に出版された論文でした。2024年1月以降に出版された撤回対象コンテンツのうち、オープンアクセスジャーナル掲載論文は約21%でした。


自動チェック / Automated checks

論文が編集者の手元に届く前に、当社の投稿プラットフォームがフィルターとして機能し、AIツールの支援のもと、複数の一次品質チェックを自動で行います。これには、重複投稿、参考文献の関連性、撤回済み文献の引用、非標準的な表現のチェックなどが含まれます。判断は、人間が介在して確認します。

原稿スクリーニング / Manuscript Screening

当社のジャーナル編集部は、初期の校正刷りを用いて各種チェックを行います。これには、図、引用・参考文献、表について、配置やキャプションが適切か、本文中で言及されているにもかかわらず欠落していないかといった確認のほか、倫理声明、各種申告、著者の貢献、臨床試験に関する事項、資金提供に関する情報の確認などが含まれます。

編集審査 / Editorial Evaluation

シュプリンガーネイチャーは、社内の編集者に加え、世界各地の18万人を超える高度な専門知識を持つ社外の学術編集者と協力しています。社外編集者は各論文の一次評価を行い、研究の対象範囲、新規性、盗用・剽窃の有無、画像の改ざんなどを確認します。

査読および編集者による決定 / Peer review and editorial decision

査読(Peer review;ピアレビュー)は、科学的プロセスの重要な一部です。当社は、それぞれの分野の専門家である100万人を超える高度な専門知識を持つ独立した査読者と協力し、学術研究の質と公正性を評価しています。査読後には最終的な編集評価が行われ、その後、出版の可否が決定されます。この段階で公正性に関する問題がある場合には、追加のチェックを要請することができ、高度な専門性を有する研究公正チームがその対応を支援します。

出版後の精査 / Post publication scrutiny

出版とは、研究成果をより広い学術コミュニティーに伝え、その知見を基盤としてさらなる研究の発展を可能にするプロセスです。その結果、論文は多くの専門家による幅広い精査を受け、ときには、同分野の研究者、研究公正上の問題を調査する専門家、著者自身などによって懸念が指摘されることもあります。そのような場合には、当社の研究公正専門チームが調査を行い、必要に応じて撤回を含む編集上の措置を講じます。

著者、編集者、研究コミュニティーへの支援

当社は、厳密さと卓越性へのコミットメントを共有する18万人を超える外部学術編集者と約100万人の独立した査読者と協力しています。

当社は、出版記録の保護、問題のあるコンテンツを除外するためのツールの編集者への提供、厳密さとグッドプラクティスの適用に向けた科学コミュニティーへの支援など、研究サイクル全体をつうじて公正性の促進に取り組んでいます。こうした取り組みは、当社の専門知識、人材と技術への多大な投資、さらに業界内での協働とリーダーシップによって支えられています。当社の編集者は、各分野の専門家であり、ジャーナルの品質と研究の公正性を確保するために、自らの時間と専門性を提供しています。


RIG logo

シュプリンガーネイチャーの研究公正専門チーム

当社の研究公正グループは、研究公正に関する問題の防止と解決、研究公正の支援と促進、ならびに研究・出版におけるベストプラクティスと倫理的行動について編集者、査読者、著者に助言することに重点を置いています。チームは、不正、操作行為、盗用などを見つけ出すために、新たな技術による支援も受けています。各種ツールはこの作業を支援しますが、中心にあるのは常に人間による判断です。

In Conversation

コミュニティーとの協力

科学における不正行為の可能性を調査し、探索し、特定する研究公正関連の研究者や調査者が増えています。こうした人々は意識向上に重要な役割を果たしており、シュプリンガーネイチャーは、科学文献の質を守り確保するために、彼らと協力して取り組むことに尽力しています。当社のChief Scientific OfficerであるRitu DhandとElizabeth Bikの対談はこちらからご覧ください。

Snapp

最新技術の活用

当社は、品質管理チェックに加え、AIを含む最新技術への投資をつうじて、研究におけるベストプラクティスを支援し、非倫理的行為の検出に役立てています。当社では、AIを活用したツールと技術を用いて編集品質チェックを支援しており、これらは社内の専門知識と組み合わせて運用されています。また、最近買収したSlimmer AIのサイエンス部門も、盗用検出のための自動チェック機能の改善などに貢献しています。さらに、次世代査読システムSnapp(Springer Nature Article Processing Platform)全体でチェック機能を強化しており、潜在的な利益相反の特定と管理など、問題のある研究を見つけ出す方法の効率化も含まれます。当社は、発見を促進し、公平性を推進し、公正性を守るためのソリューションを引き続き拡充しています。

transdisciplinary collaboration

業界内での協力

シュプリンガーネイチャーは、より良い研究実践の推進と支援に貢献する、業界内の積極的な発信者です。当社はCOPE(Committee on Publication Ethics;出版倫理委員会)のメンバーとして活発に活動しており、研究公正を守る出版社主導の取り組みであるSTM Integrity Hubの設立においても重要な役割を果たしました。当社の社員は、ガバナンス委員会の議長を務めるなど、その運営においても主導的な役割を担っています。当社は、関係者が利用し、その恩恵を受けられるよう、技術的知識や製品を共有することに取り組んでいます。2025年、当社は意味不明な文章 (non-sense text)を検出するAIツールを、STM Integrity Hubに提供しました。STM Integrity Hubは、大手から小規模まで幅広い出版社が、投稿論文に研究公正上の問題が疑われる兆候がないかを確認することを支援する、業界全体の取り組みです。

Nature Masterclasses

トレーニングおよびワークショップ 

当社は、著者、編集者研究者向けに、研究公正に特化したNature Masterclassコース「Research Integrity: Publication Ethics(研究公正:出版倫理)」や「Research Integrity(研究公正)」の入門編など、一連の無料オンライン教材を提供しています。また、より良い研究実践を促進し、研究者によるデータ共有、透明性と再現性の向上、引用の多様性の改善、責任ある著者資格の推進を奨励するため、編集方針も整備しています。こうしたリソースに加え、世界各地における研究公正トレーニングの提供状況を調査する一連の国別調査や研究者主導のプロジェクトをつうじて、研究公正に関するトレーニングニーズへの理解を深めるため、コミュニティーに積極的に働きかけ続けています。

研究公正に関わる問題事例

研究公正にはさまざまな問題が含まれ、それらはいくつかの理由によって起こる可能性があります。

  • 悪意のない、誠実な誤り:研究者の意図は誠実かつ倫理的であったとしても、その研究者自身、または別の研究者が研究上の誤りに気づく場合があります。このような場合には、必要に応じて撤回または修正が行われることがあり、著者自身の申し出によって行われる場合もあります。
  • 公正性基準の違反:一方で、データの改ざん、虚偽の著者資格の主張、盗用、画像の操作、職業倫理規定に関連する公正性違反など、非倫理的な方法で研究が行われた、または結論が導き出されたことが判明する場合があります。これには、特定のジャーナルを組織的に標的とし、編集プロセスを操作しようとする試みが含まれることもあります。
  • ペーパーミル(Paper mills;論文工場):完全に捏造されている、虚偽のデータを含む、大量に盗用されている、またはそのほかの点で倫理上問題のある(問題を有する)不正な研究論文について、著者資格を販売する商業組織を指します。

問題事例の可能性が見つかった場合に取られる措置

問題が検出された場合、当社の研究公正専門チームは以下の対応を行います。

  • Committee on Publication Ethics(COPE)のベストプラクティス・ガイドラインにしたがい、徹底的な調査を行います。
  • 必要に応じて出版後査読を実施します。
  • 著者、および必要に応じて所属機関と連絡を取ります。著者が共同著者と協議し、詳細な回答を準備するには時間が必要なため、このプロセスには時間を要する場合があります。データ分析やそのほかの評価の証拠のために外部専門家が必要となる場合もあります。
  • 一貫性を確保するためすべての段階を監督し、問題が解決するまで継続的な支援を提供します。
  • 最終的な編集判断の責任を負うジャーナル編集者に助言を提供します。

事例の規模や複雑さはさまざまであり、対応にかかる時間もそれに応じて異なります。

研究公正チームの活動と、原稿に問題が検出された場合に当社が従うプロセス

十分な調査の結果、研究公正上の問題が確認された場合には、以下の措置が取られることがあります。

修正 / Corrections

著者またはジャーナルによる重要な誤りが、出版論文の科学的公正性、出版記録、および/または、著者ないしジャーナルの評判に影響を与えている場合、その誤りを正すために、修正が行われます。ただし、研究の結論自体を覆すものではありません。

補遺 / Addendum

補遺は、論文出版後、論文の理解に重要な追加情報が明らかになった場合に発行されます。

問題提起 / Matters Arising

出版後に寄せられた正式なコメントで、出版された研究成果に対して、 異議を唱えたり、明確な説明を求めたりすることがあります。そのような解説は、査読を経て、問題提起(Matters Arising)として、著者からの返答(Reply)とあわせて オンライン上で出版されることがあります。問題提起は、査読が行われるとともに、ジャーナルが求める出版基準を満たしたものだけが出版されます。提起された問題が重大であると判断された場合には、明確化のための説明文、修正、編集者による懸念表明(Editorial Expression of Concern)、撤回など、さらなる措置が取られる場合もあります。

編集者注 / Editor's Note

編集者注(Editor's Note)は、出版論文への懸念が提起された場合、その調査にジャーナルが着手したかどうかを知らせる通知です。オンラインのみで更新される情報で、最終公開版のHTML版に対してのみ出されます。インデックスされません。

編集者による懸念表明 / Editorial Expression of Concern (EEoC)

編集者による懸念表明は、公正性に影響を与える重大な懸念が出版論文にあることを知らせ、読者に注意を促すために発行します。EEoCは、オンライン上で公表され、出版論文と相互にリンクされます。DOI(デジタルオブジェクト識別子)が付与され、PubMed、Web of Science、Scopusなどの主要学術データベースにもインデックスされます。EEoCは、暫定的な措置として、また、 最終措置としても発行されます。

編集者注記またはEEoCの発行は、読者に最新情報を提供するとともに、長期に及ぶ可能性がある研究公正の調査が現在進められていることを知らせる手段として、Committee on Publication Ethics(COPE)によって推奨されています。調査が完了し、訂正や撤回などの正式な対応に置き換えられることが一般的です。

撤回 / Retraction

撤回は、論文を修正する中立的な手段です。論文の公正性が著しく損なわれている場合や、研究倫理に反する行為があった場合に行われます。著者自身が問題に気付き、自発的に撤回を申し出ることもありますが(事実、多くの撤回が著者自身の申し出に端を発しています)、最終的な判断は編集者が行い、研究公正チームの助言にもとづいて決定されます。撤回がCOPE(Committee On Publication Ethics)などの業界団体が定めた指針に則って実施されます。