【注目のハイライト】健康:抗肥満薬は治療後の体重のリバウンドと関連がある
2025年7月24日
減量を目的として薬剤を処方された患者は、処方中止後に体重が再び増加するリバウンドを経験する可能性があるというメタ分析を報告する論文が、オープンアクセスジャーナルBMC Medicine に掲載される。この研究は、11件のランダム化試験で体重減少薬を投与された患者のデータを分析し、体重の増加量はその薬の種類によって異なるものの、投薬終了後に体重の増加傾向が広く見られることを示している。
米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)は、オルリスタット(orlistat)、フェンテルミン・トピラマート(phentermine-topiramate)、およびセマグルチド(semaglutide)を含む6つの抗肥満薬(AOM:anti-obesity medications)を体重減少補助目的で承認している。糖尿病治療薬として開発されたグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1:Glucagon-like peptide-1)も、体重減少補助薬として患者に処方されるケースが増加している。しかし、最近の研究では、AOMを処方された患者は、これらの薬物の服用を中止した数ヶ月後に体重が再増加する可能性があることが示唆されている。
Xiaoling CaiとLinong Jiら(北京大学人民医院 〔中国〕)は、AOMの服用を中止した患者の体重変化を調査した世界中の11件の研究のメタ分析を実施した。全体として、著者らは治療群の1,574人と対照群の893人のデータを分析した。体重の変化は、薬物投与中止後の体重とBMI(body mass index;ボディマス指数)の変化で測定された。メタ分析に含められた11の研究のうち、6つはGLP-1受容体作動薬(RAs:receptor agonists)に焦点を当てたもの、1つはGLP-1とGLPの二重受容体作動薬に焦点を当てたもの、1つはオルリスタットに焦点を当てたもの、2つはフェンテルミン・トピラマートに焦点を当てたもの、1つはナルトレキソン・ブプロピオン(naltexone-bupriopion)に焦点を当てたものである。
著者らは、薬剤の種類、糖尿病の有無、および食事や運動などの生活習慣の変更の有無など、異なる要因を調整した。分析結果によると、AOMは使用中に有意な体重減少と関連しており、AOMの投与中止後8週間から体重増加が始まり、その後平均20週間継続した後、 やがて横ばいとなることが明らかとなった。体重の増加は追跡期間によって異なり、参加者はAOMの投与中止後8週目、12週目、20週目に体重の増加が顕著な期間を経験した。体重の増加量は、参加者が服用した薬の種類や生活習慣の変更の継続性など、複数の要因に依存していた。例えば、市販のGLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(tirzepatide)の36週間の治療を完了した参加者は、プラセボに切り替えた後、以前に減量した体重のほぼ半分を再増加した。
著者らは、メタ分析に生活習慣介入研究と肥満手術の研究が含まれていなかったため、本研究の枠組み内で異なる減量法を比較できる範囲が限定的であることを指摘している。また、胃バイパス手術や垂直バンド胃形成術などの他の体重減少方法でも体重の再増加が報告されていると述べている。
Article details
Review | Open access | Published: 22 July 2025
Wu, H., Yang, W., Guo, T. et al. Trajectory of the body weight after drug discontinuation in the treatment of anti-obesity medications. BMC Med 23, 398 (2025). https://doi.org/10.1186/s12916-025-04200-0
「注目のハイライト」は、シュプリンガーネイチャーの広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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