【プレスリリース】OASEとシュプリンガーネイチャーが新たな転換契約に合意し、日本におけるオープンアクセス(OA)をさらに推進
2026年から開始される日本での新たなオープンアクセス契約により、約80の参加機関の研究者は、2,000誌を超えるシュプリンガーネイチャーのジャーナルでオープンアクセス出版の支援を受けることができます。
ロンドン|東京 2025年12月4日
OASE(Open Access for Scholarly Empowerment)とシュプリンガーネイチャーは、日本におけるオープンアクセス(OA:Open Access)のさらなる促進を共通の目的として、新たな転換契約に合意しました。2026年から2028年までの期間、この合意により、OASEとの転換契約の枠組みに関心表明をしている大学・大学校および国立研究開発法人は、オープンアクセス出版への完全または部分的な移行を選択できるようになります。現在、83の機関が2026年からの参加を表明しています。
今回の合意により、日本の参加機関に所属する研究者は、2026年には2,000誌以上のSpringerのハイブリッドジャーナルにおいて、3,000報を超えるオープンアクセス論文を出版できる見込みです。さらに、当転換契約では、約2,200誌を収録するSpringerジャーナルパッケージ、および所属機関が購読していたPalgrave Macmillan、Adis、Academic Journals on nature.comのジャーナルへのアクセスも提供します。
OASEの代表を務める東北大学の大隅典子教授は次のように述べています:
「日本政府の『学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針』に基づき発足したOASEは、大学・研究機関の経営層がこれまで以上に研究発信力の強化にコミットすることを目指して活動してきました。多くの機関が関心を表明したことにより、シュプリンガーネイチャー社とは2023年に開始したパイロット転換契約の成果をさらに発展させるための建設的な協議を行うことができました。オープンアクセスの推進には様々な手段があってしかるべきですが、今回の合意がその一助となることを願っています。今後もその影響を継続的に評価し、得られた知見をコミュニティーと共有していきます。」
シュプリンガーネイチャーのVice President Sales Japan, Southeast Asia and Oceaniaであり、シュプリンガーネイチャー・ジャパンの代表取締役社長であるアントワーン・ブーケは、次のように述べています。
「OASEとの合意により、日本におけるオープンアクセスへの移行を支援できることを嬉しく思います。これにより、研究者は研究のビジビリティー、被引用数、および研究成果の社会的発信の向上など、OAの恩恵を最大限に活用できるようになります。2024年、シュプリンガーネイチャーから出版される原著論文の50%以上がOAで公開され、転換契約により、契約対象外の機関から出版された場合に比べて、約10倍のゴールドOA論文が出版されました。今回の合意により、すでに日本において展開している、研究大学コンソーシアム(RUC) 向けパイロット転換契約およびJ-SPRINTA を引き継ぎ、さらに拡充されます。」
「日本における当社の転換契約の最新データによると、転換契約に参加した機関において、参加した初年のOA出版論文数は、参加する前年と比べて、全体で約4倍増えています*1。また、OA論文は、非OA論文に比べて、平均で4.4倍以上ダウンロードされ、Altmetricのアテンション・スコア(注目度)は約10.7倍高いことが当社の最新のデータによって示されています。OASEとシュプリンガーネイチャーが日本の研究者のニーズに合わせたオープンアクセスの推進という目標を共有して取り組めたことに感謝しています。研究成果をオープンにすることで、世界が直面する最も深刻な課題の解決を加速できると信じています。」
*1 2023年もしくは2024年から転換契約に参加している38機関において、転換契約のOA出版対象であるハイブリッドジャーナルにOAで出版した論文数の合計を参加する前年と参加した初年を比較して算出。
シュプリンガーネイチャーは、2023年から2025年までの3年契約として、研究大学コンソーシアム(RUC:Research University Consortium)とのパイロット転換契約を通じ、初めて日本での転換契約を導入しました。この転換契約には、初年度には10のRUC加盟機関が参加し、2025年にはその数が24機関にまで拡大しました。さらに2024年には、 同じく2026年までの3年契約として、RUC以外の機関向けに新たな転換契約モデルJ-SPRINTA(Japan Springer Research Institute Transformative Agreement)*2 を開始し、2025年にはJ-SPRINTAの参加機関数が36機関に拡大し、RUC向けパイロット転換契約と合わせて、日本国内での転換契約参加機関数は合計60機関に達しました。これらの転換契約は、日本におけるOA出版への移行を支援することを目的としており、2025年には年間2,400報を超えるOA論文の出版が見込まれています。OASEとの新たな契約は、2025年末に終了予定の現行RUC向けパイロット転換契約を引き継ぐ形で開始されます。
2026年から始まるOASEとの新たな転換契約では、参加機関に所属する研究者が出版する研究論文をほぼすべて、または一定数をOA化する機会を提供することで、各機関に適した速度でのOAへの移行を可能にします。完全移行モデルで契約した機関は、所属研究者が対象ジャーナルに責任著者として出版されるほぼすべての論文をゴールドOAで出版することが可能になります。また、部分的移行モデルで契約した機関においても、出版論文数の半数以上をOAで出版することが可能になります。
転換契約に参加している機関については、「日本のオープンアクセス契約」のページでご覧いただけます。
OASE向けのOA契約については、「Open Access for Scholarly Empowerment向けオープンアクセス契約」をご参照ください。
*2 J-SPRINTA(Japan Springer Research Institute Transformative Agreement;ジェイ・スプリンタ)は、Springerジャーナルパッケージの購読の有無にかかわらず、年間5報以上の論文を出版する見込みのあるRUC以外の機関も対象に含め、2024年から2026年までの3年間の複数年契約として発足しました。本契約により、参加機関に所属する研究者は、当社のハイブリッドジャーナルにおいて、OA出版の支援を受けることができます。また、比較的安価な追加費用により、 Springerジャーナルパッケージへのアクセスが可能になります。現在J-SPRINTAに参加されている機関は、2026年からOASEとの新たな転換契約に移行していただけます。
シュプリンガーネイチャーのオープンアクセスおよび転換契約に関するデータについては、2024年オープンアクセス(OA)報告書をご覧ください。
関連リンク
- 【共同プレスリリース】研究大学コンソーシアム(RUC)のメンバーを中心とする国内10大学がシュプリンガーネイチャーとオープンアクセス論文出版の促進に関する合意書に署名(2023年11月21日)
- 【プレスリリース】シュプリンガーネイチャー、日本の大学との転換契約を拡大し、オープンアクセスへのさらなる移行を推進(2024年1月22日)
- 【お知らせ】日本における転換契約のケーススタディを公開しました(2024年2月27日)
- 【プレスリリース】シュプリンガーネイチャー、日本における転換契約を拡大し、オープンアクセスへのさらなる移行を支援(2025年1月29日)
- 【プレスリリース】シュプリンガーネイチャーの2024年オープンアクセス(OA)報告書は、著者にとっての価値が向上していることを明らかにしています(2025年7月31日)
- 転換契約:一般的には、論文の閲覧のために大学などが出版社に対して支払う費用を、論文出版のための費用(論文掲載料、APC;Article Processing Charge)へと段階的に転換させ、それによって論文のオープンアクセス出版の拡大を目指す契約のことを指します。
- オープンアクセス(OA;Open Access):研究成果が出版時に無料でアクセスすることを可能にするための一連の原則と実践方法。OAは、ジャーナルに掲載された論文や書籍などの研究成果をオンラインで無料で即時利用できるようにし、デジタル環境でフルに利用する権利を提供します。
- ハイブリッドジャーナル:購読型ジャーナルのうち、受理された論文をゴールドオープンアクセスで出版するオプションを著者に提供するジャーナル。オープンアクセスで出版する場合には、APCが発生します。
- ゴールドオープンアクセス(ゴールドOA):出版社のプラットフォームにおいて、論文や書籍をオープンアクセスで出版するルートです。ゴールドOAで出版された論文は、掲載後ただちにオープンアクセスとなり、プラットフォーム上にて無料で閲覧可能となります。ゴールドOAでは、原稿編集(コピーエディティング)や組版後の最終公開版(VOR;Version of Record)にアクセスできるようになります。ゴールドOAの出版は、論文掲載料(APC;Article Processing Charge)や転換契約によって賄われています。
- 論文掲載料(APC;Article Processing Charge):オープンアクセス(OA)の論文に対するAPCは、査読からコピー編集、専用サーバーでの最終論文のホスティングまで、出版プロセスのすべての段階においてさまざまなサービスをカバーしています。これに加えて、こちらの料金により、論文がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもと、オープンアクセスで公開され、すべての読者がすぐに利用できるようになります。
出版にはコストがかかります。購読ジャーナルは、コンテンツにアクセスするための料金の徴収によって出版費用がカバーされています。ゴールドオープンアクセスのコンテンツは、どなたでも無料で自由にアクセスできるため、出版費用は論文掲載料(APC)によって賄われます。APCは、論文が受理されてから出版されるまでの間に支払われ、それぞれの出版社、ジャーナル、分野によってAPCが異なります。また、掲載料や出版料を学会などのスポンサーが負担することで、APCを徴収しないジャーナルもあります。APCには、論文全文への永続的、即時的かつ世界中からのアクセスの提供に加えて、下記が含まれます。- 編集作業:査読、管理サポート、コンテンツの委託、ジャーナルの開発。
- 技術的なインフラストラクチャーとイノベーション:オンラインジャーナルシステムやウェブサイトの開発、メンテナンス、運用。
- 論文の制作:論文のフォーマット、マークアップ(タグ付け)、インデックスサービスへの登録。
OASEは「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」の実現を目標に、政府からの体制構築の支援を受け、グローバルな学術出版社等との大学を主体とする集団交渉のために、2024年に発足したチームです。詳細は、OASEのウェブサイトをご覧ください:https://oase.jp/
シュプリンガーネイチャーは、世界をリードする研究出版社のひとつです。当社は、最も多くのジャーナルや書籍の出版数を誇り、オープンリサーチのパイオニアでもあります。180年以上にわたって信頼されてきた主要ブランドを通じて、研究者が新たなアイデアを見いだしてそうした発見を共有すること、医療従事者が医学の最前線に立ち続けること、教育者が学習を促進することを支援するテクノロジーを活用した製品、プラットフォーム、およびサービスを提供しています。当社は、当社が支援するコミュニティーとの協力のもと、知識を共有し、世界に対する理解を深めるための進歩に貢献していることを誇りに思っています。
詳細は、about.springernature.comおよび@SpringerNatureをご覧ください。
宮﨑 亜矢子
シュプリンガーネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com