[プレスリリース] Projekt DEALとシュプリンガー・ネイチャー、世界最大規模の変革的オープンアクセス契約に関する合意締結

ロンドン 2019年8月22日

  • Projekt DEALとシュプリンガー・ネイチャーは、本日、ベルリンで合意覚書(MoU)に署名しました。最終的な契約は年内に締結される予定です。
  • 本合意には、Projekt DEALに参加する全機関(ドイツの700以上の公立・私立の学術機関や研究機関)が含まれるため、ドイツの学術界で活動するほぼすべての人にとって、シュプリンガー・ネイチャーのコンテンツへのアクセスが大きく向上することになります。
  • 本合意によって、シュプリンガー・ネイチャーは、ドイツの研究者や科学者の論文を年間1万3000本以上、オープンアクセス(OA)で出版する見込みです。OA出版された論文は、即時に世界に公開され、無料で閲覧できるため、ドイツの研究成果の認知度向上と活用促進が期待されます。
  • 今回のTransformative Agreement(変革的契約)で規定されるコストとサービスの構造によると、参加機関に所属するすべての研究者と学生は、研究分野を問わずシュプリンガー・ネイチャーが出版するジャーナルの大半(ハイブリッドジャーナルと完全OAジャーナル約2500タイトル)でOA出版が可能になるほか、1997年以降のバックファイルを含め、これらジャーナルの全コンテンツを読むことができるようになります。
  • 本覚書への署名によって、シュプリンガー・ネイチャーは、OAへの移行実現に向けて主導してきた取り組みを大きく前進させる一方、Projekt DEALは、ドイツの研究者が完全OAで迅速に研究成果を出版する機会を大幅に増やし、世界の研究者に読まれることによって、さらなる研究の土台として活用される環境を整えること、さらには学術情報流通全体のコストを抑制すること、というプロジェクトの目標に大きく近づきました。

本日、Projekt DEAL側の代表であるMPDL Servicesとシュプリンガー・ネイチャーの間で、合意覚書(MoU)が締結されました。これによって、世界最大の包括的なオープンアクセス(OA)契約が年内に締結される見通しとなりました。

この合意は、両者がオープンサイエンスの原則に向けて歩調を合わせて取り組んでいくことが確認された結果、実現したものです。Projekt DEALは、大規模なOAを通じてドイツの研究を発信することを目指し、その実現に取り組んでいます。一方、シュプリンガー・ネイチャーは、世界最大のOA出版社として他社に先駆けてOA移行に取り組み、知見を蓄積しています。この両者の合意によって、ドイツの研究者が年間1万3000本を大きく上回る数の論文をOA出版すると見込まれており、それらの論文は出版された瞬間から、世界中の学生、研究者、科学者などが等しく無料で閲覧、共有、活用、および再利用できることになります。

今回の変革的合意は、完全OAに関する部分および「出版と購読(PAR:Publish and read)」に関する部分の2部構成になっています。合意では、一定の条件を満たす著者は、シュプリンガー・ネイチャーの完全OAジャーナル(600以上のタイトルがあり、出版社としては世界最大規模)および1900タイトルにおよぶハイブリッドジャーナル(OA出版された全論文のうち4分の1をすでにハイブリッドで出版)の両方で、OA出版ができることになっています。さらに、参加機関の研究者は契約期間中、Springer、Palgrave、Adis、Macmillanが出版する学術ジャーナルのコンテンツにいつでもアクセスできます。

覚書(MoU)の主なポイント

  • 最終契約は、2020年から2022年まで有効で、2023年まで延長可能です。
  • 2020年のPAR部分は、OA出版の論文9500本以上をベースとし、参加機関はSpringer、Palgrave、Adis、およびMacmillanが出版するジャーナル1900タイトルをいつでも購読できるものとします。PARでの購読料およびOA出版料は、論文単位のPAR料金(2750ユーロ)に反映します。
  • シュプリンガー・ネイチャーは、全機関に対し、BMCおよびSpringerOpenのジャーナルでのOA出版費用を定価から20%割り引きます。また、APC (article processing charge)の値上げは、1年間に1タイトル当たり3.5%以下(2020年の定価を基準に算出)とします。
  • PARの要素には、NatureおよびNatureブランドの購読ジャーナルや純粋な専門誌ならびに、Scientific American、Spektrum der Wissenschaftなどの雑誌は含みません。
  • 参加機関は契約期間中、対象ジャーナルの1997年以降のバックファイルに無料でアクセスできます。
  • シュプリンガー・ネイチャーとProjekt DEALは、本合意に含まれるシュプリンガー・ネイチャー発行の全ジャーナルについて、アーカイブへのアクセスギャップの解消も目指します。

シュプリンガー・ネイチャーのCEOであるDaniel Ropersは、次のようにコメントしています。
「Projekt DEALに協力し、ドイツの学術出版のOA移行に貢献できることは非常に光栄です。今回の取り組みは、大規模かつ複雑なものであったため、実現には3年を要しましたが、ドイツの各研究機関からご指導をいただき、協力して取り組んでいただいたおかげで画期的なソリューションの実現にいたりました。Projekt DEALとシュプリンガー・ネイチャーが信念を共有し、ともに協力し、率直に意見を述べ合う中で、双方が長期的に受け入れられる合意が形成されました。この合意によって、ドイツの学術界では、所属機関の大小にかかわらず、また、物理学、自然科学、応用科学、社会科学のどの分野であっても、さらには助成金の対象であるなしも問わず、すべての研究者がシュプリンガー・ネイチャーからOA出版できるようになります。他方、シュプリンガー・ネイチャーにとっては、学術界のパートナーとしてOA移行における主導的役割を果たすことにより、より速い成長が実現します」

また、運営委員会の議長としてProjekt DEALのリーダーを務めるGerman Rectors’ Conferenceの元President、Prof. Dr. Horst Hipplerは、次のように語っています。
「公正な価格モデルとOAへの移行という、Projekt DEALが掲げる二つの中核目標がどちらも満たされる合意を締結することができ、大変うれしく思っています。シュプリンガー・ネイチャーは、長い歴史があり、ドイツの学術界で高く評価されている出版社です。今回の合意では、学術界のパートナーとして積極的にイノベーションを進め、科学や研究の発展に最適なソリューションを提供するという同社の姿勢が示されました。したがって、今後締結される最終契約は、低価格かつ持続可能な方法による研究成果へのアクセスを実現するというProjekt DEALの目標に大きく貢献するものとなるでしょう。協議にかかわったたくさんの方々、大学、図書館、研究機関など、Projekt DEALを信頼して交渉を任せてくださった数百の学術機関の皆様に、感謝申し上げます。また、契約実現に向けて、特に実務面や法務面を中心にさまざまなサポートを提供してくださったMax Planck Societyにも御礼を申し上げます」

Projekt DEALを支えるAlliance of Science OrganisationsのメンバーであるMax Planck Societyは、100%子会社となるMPDL Services GmbHをMax Planck Digital Libraryの傘下に設立しました。MPDLは、今回の契約の当事者となり、ドイツの学術機関が契約事項を実施できるよう支援します。

Max Planck SocietyのPresident、Dr. Martin Stratmannは、次のように述べています。
「シュプリンガー・ネイチャーのジャーナルには、ドイツの研究者による論文が多数掲載されていることを考えると、いわゆる『購読料の壁』を取り除いて自由な研究を実現しようという動きの中で、今回の契約は大きな節目になります。『購読料の壁』は、現在のデジタル時代の研究者や科学者の活動にとって、長期間にわたって制約になっています。シュプリンガー・ネイチャーのような大手出版社とコストニュートラルで変革的契約を締結すれば、Open Access 2020 Initiativeに歩調を合わせる学術機関や研究機関にとって新しいベンチマークとなります。完全にオープンな情報環境を実現するまでのプロセスの一段階として、現在『購読料の壁』に対する補助に使われている資金を環境整備に振り向け、研究者にとって本来あるべき環境であるオープンな学術ジャーナル実現のために使えることが実証できるからです」

シュプリンガー・ネイチャーのChief Commercial Officer、Frank Vrancken Peetersは、次のように述べています。
「シュプリンガー・ネイチャーは、2014年以降、業界の先陣を切って、変革的契約を進めてきました。以来、変革的契約がオープンリサーチに及ぼす影響を調査していますが、OA論文は、引用数とダウンロード数がより多く、規模・範囲ともにインパクトが大きいことが分かりました。だからこそ、「transformative agreement(変革的な契約)」と呼ばれるのであり、今回の契約は、ドイツの資金による研究の認知度の向上と活用の促進に役立つと確信しています。しかもその規模を考えれば、オープンサイエンスに向けたグローバルレベルの目標にも大きく近づくものだと思います」

Projekt DEALについて 

Projekt DEALは、Alliance of Science Organisationsが設立した、ドイツの主要な科学機関、研究機関の大半を代表するコンソーシアムです。総合大学、専門大学、研究機関、州立図書館、地域図書館など、主に公的資金で運営される学術機関700機関以上が参加しています。プロジェクトの一環として、大手学術出版社の電子ジャーナルポートフォリオ全体を対象に、ナショナルライセンス契約を締結します。詳しくはwww.projekt-deal.de/springer-nature-newsをご参照ください。

シュプリンガー・ネイチャーについて

シュプリンガー・ネイチャーは、研究、教育、専門領域において世界をリードする出版社の1つです。革新的なプラットフォーム、製品、サービスを通じて、高品質なコンテンツを提供しています。シュプリンガー・ネイチャーのインプリント、書籍、ジャーナルなどのリソースは、世界中の何百万人ものユーザーに日々届いており、研究者、学生、教師、専門家による発見、学習、成果の達成を支援しています。当社の目的は、傘下のブランドを通じて研究・教育・専門コミュニティーを支援することです。その実現のために当社はこれらコミュニティーを最優先に考え、可能な限り最高水準のコンテンツとテクノロジーを提供し、これらコミュニティーの利益と社会全体のために出版の未来に尽力しています。 詳しい情報は、springernature.com/group をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。

Max Planck Societyについて

Max Planck Societyは、自然科学、生命科学、人文科学に関する基礎研究を行う研究機関です。1948年の設立以来、18人のノーベル賞受賞者を輩出しています。Max Planck Societyおよび傘下の86のMax Planck Instituteや施設は、ドイツの科学界を代表する世界的な研究機関です。ドイツ国外にも5カ所の研究施設があるほか、米国のプリンストン大学、フランスのパリ政治学院、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、日本の東京大学などの研究機関とともに、20カ所のMax Planck Centerを運営しています。2018年の年間予算は、18億ユーロで、連邦政府と州政府が半分ずつ拠出しています。詳しくはwww.mpg.deをご参照ください。

The Max Planck Digital Library(MPDL)は、Max Planck Societyで学術サービス提供の中心となる部門です。主な業務は、戦略計画の策定、傘下の機関やそこに所属する研究者・科学者に研究情報を届けるために必要なデジタル基盤の開発と運営、ウェブベースの学術情報流通支援、研究ツールや研究データの管理、ソフトウェアの許諾などです。

本件に関するお問い合わせ

宮﨑 亜矢子
シュプリンガー・ネイチャー
コミュニケーションズ
Tel: +81 (0)3 4533 8204
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com

Katie Baker
シュプリンガー・ネイチャー
コミュニケーションズ
Tel: +44 (0) 207 843 2651
E-mail: katie.baker@springernature.com
 
Ralf Kellershohn
German Rectors’ Conference
Deputy press spokesman
Tel: +49 (0)160 96 98 53 19
E-mail: kellershohn@hrk.de
 
Dr. Christina Beck
Max Planck Society
Head of Communication / Press Officer
Tel: +49 (0)89 2108 1275
E-mail: beck@gv.mpg.de

※ 本プレスリリースの原本は英語であり、日本語は参考翻訳です。

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